饗有


 

「は、離してぇ!」

 セーラー戦士、セーラーヴィーナスは自分の見通しが甘かったことを今さながらに後悔していた。

 町中に突如として湧いて出たゲル状の妖魔。それが最近頻発していた若い女性の行方不明事件と関連があると睨んだセーラー戦士たちは、その元凶を探し浄化するため街の各地へと散らばっていった。

 その中で、ジュピターとコンビを組んで探索をしていたヴィーナスは、壁越しにも分かる強烈な妖気を放つ占い館を発見した。周りにはゲル妖魔が這い出たと思しき粘液の筋が幾重にも伸び、こここそ妖魔の発生源だというのが否が応にも教えてくれる。

「突入するわよ、ジュピター!」

今にも館の中へ突入せんとするヴィーナスに、ジュピターはそれは無謀だと言いたげにヴィーナスの肩を抑えた。

「待ってヴィーナス!ここはまず皆を集めて…」

「そんな悠長なことをしている暇はないわ!この間にも、妖魔はどんどん増えているのよ!」

 そうだ。ゲル妖魔は逃げ惑う人間を捕まえては取り込んで同化し、新たなゲル妖魔へ変えている。一刻を争うのは確かなのだ。

「大丈夫よ。あいつら一体一体はたいした力もない。大本の妖魔を倒して、早く被害を食い止めないと!」

「え、ええ…」

 ジュピターはまだ乗り気ではなかったが、ヴィーナスの押しに負けて一緒に踏み込む道を選んだ。

 

 それが、最悪の選択肢を選んだことも知らずに。



 館の中に踏み込んだ二人は、壁、床、天井から湧き出してくるゲル妖魔にあっという間に囲まれてしまった。確かに1体ずつは弱いとはいえその数はあまりに圧倒的過ぎた。

 ジュピターはたちまちゲルの奔流に姿を消し、ヴィーナスもまたその四肢をゲル妖魔に絡め取られてしまっていた。

「いやっ!いやぁっ!」

 手も足も動きを封じられ何の反撃の手立てもない。こうなってしまってはさしものセーラー戦士も年相応単なるの少女でしかなかった。

「ウェアアァァ――――」

 ピンク色の身体に若草色の双眸を煌めかせ、無数のゲル妖魔がヴィーナスの肢体に次々と群がってくる。

「や、やめっひゃあぁっ!」

 体をよじらせ抵抗するヴィーナスの声が突然上ずった。何体かのゲル妖魔がそのぶよぶよの体を使い、ヴィーナスの体を貪り始めたのだ。

 あるものはヴィーナスの服を引き千切り、あるものは張りのある太腿を撫で回し、あるものは体をうねらせてヴィーナスの体を絡め取っていく。

 まるで氷のように冷たく、しかしローションのように粘度の高い肌触りはヴィーナスの肌にぴたりと貼り付くように纏わりつき、ヴィーナスにおぞましい怖気と共に、まるで電気に痺れたみたいな強烈な刺激を与えてきていた。

(は、早く逃げないと…!)

 それは分かっている。だが、体は拘束されて自由が利かず、頭を働かせようにも全身から湧き上がってくる不快な刺激が邪魔をしてきて叶わない。

「ウアアァァ‥…」

そんな時、目の前にぬぅっと迫り出してきたゲル妖魔。その姿を見てヴィーナスは絶句した。

「う、嘘……」

 それは先ほどまでセーラー戦士だった、ジュピターのなれの果てだった。


「そ、そんな……ジュピター……」

 元ジュピターだった妖魔は、ゲル状の体をプルプルと震わせてヴィーナスを睨んでいる。虹彩もなく緑一色の瞳は一見感情を有しているようには見えない。

 が、次の瞬間ジュピターは笑ったかのように顔をグチャリと歪ませると、呆然とするヴィーナスの顔目掛けてずん、と突っ込んできた。

 不意を突かれたヴィーナスは何の身動きも出来ず、そのままジュピターはヴィーナスの口へその身を潜り込ませてきた。

「ンンンッ?!」

 口の中に感じる強烈な圧迫感にヴィーナスの顔が苦しげに歪む。だがジュピターはそんなヴィーナスにお構い無しに体の奥へとズンズン進んでいく。

(ジ、ジュピターが! ジュピターが私の中に!)

 ジュピターのゲル状の体が頭、胸、腰とずぶずぶ入っていくのが見える。胃袋からは猛烈な満腹感が発生し、ジュピターが体を捩じらせて奥へと進んでいくのが内臓の粘膜越しに感じられる。

 口から喉までジュピターのゲルで満たされているはずなのに不思議と息苦しさは感じられない。それは、ジュピターのこの行為がヴィーナスを殺害するためでないことの証左であろう。

 では、殺害を目的にしていないとなれば一体何をしようとしているのか。

(…………ハッ!)

 ここに至ってヴィーナスはやっと思い出した。先ほどからゲル妖魔が街中で行っていること。そして、一緒にここに来たジュピターが今どうなっているか。

(このままじゃ、私も妖魔にされちゃう!)

 あまりにも気づくのが遅いような気もするが、まだまだ子供ともいえる年齢の少女が、仲間が変わり果てた姿で自分に襲い掛かってきたとなったら思考停止に至るのも止むを得ないだろう。

 そして、今さらながらに自分の危機に気づいてもそれに抗する事はもはや遅すぎると言わざるを得なかった。

 他の妖魔がヴィーナスの剥き出しになった尻に手を添えたかと思うと、口から舌と言うには大仰過ぎる触手を伸ばし、ヴィーナスの秘部へと突っ込んできた。

「んぐぐぅ!」

 ブチッという音共に秘部からは真っ赤な血が零れだし、あまりの激痛にくぐもった悲鳴を上げるがそんなものでは収まらない。

 今度は後ろの不浄の穴がぐいぐいと拡張されズルズルッとゲルが内臓をせり昇っていく。臍にズブッとゲルが刺したかと思うとじるじると腹部をゲルが侵食していく。乳首に甘い刺激が疾ったかと思うと乳腺をゲルが押し広げていく。悲鳴を上げようとする口を妖魔がキスで塞ぎ、さらにゲルを流し込んでくる。


 しかも、それらが不快に感じられない。それが逆に恐ろしい。

 ついさっきまで性交の『せ』の字すら知らなかったヴィーナスの肢体はゲル妖魔の手で一気に開発し尽くされ、一流の情婦も斯くやと言わんばかりの感度を得るに至っていた。

そんな肢体を妖魔はさらに蹂躙せんとばかりに責め立て、膣口からは複数の妖魔が出入りをし、西瓜ほどに膨れ上がった双乳の先端は痛いほどに充血している。

(た、たふ……たふけてぇ……)

全身を蹂躙されているヴィーナスは誰かに救いを求めようとしたが、声の代わりに口から出てきたのは妖魔のペニス状の触手とその先端から噴き出る精液を模した夥しいゲルだった。

(い、いやぁぁ!)

まるで自分が口から射精しているかのようなそんな非現実的な光景に、とうとうヴィーナスの神経は擦り切れそのまま意識を失ってしまった。